OB/OGの皆様からの寄稿
2013/2/24 松田謹一様 「消費税率アップが招く消費氷河時代」
消費税率アップ法案は、景気条項が付いているものの安倍政権が財務省の強力なバックアップを後ろ盾に大型の財政支出、金融緩和政策等を行うことから景気動向を判断する本年7月には景気条項をクリアし実施される可能性は高い。消費税率は2014年に8%、2015年に10%に引き上げられる。しかし、消費税率が上がると政府の思惑通りに消費税額は増大するのであろうか。消費税額は消費額×消費税率によって算出される。税率を5%引き上げても消費額が5%ダウンすれば税額は変わらない。税額が上がるか否かは消費額にかかっている。かって消費税率を3%から5%に引き上げた時は、消費額は著しく低下して消費税額はダウンした。その後消費税額は引上げ前のレベルに復活していない。
5%引上げ時と比較して現在の経済状況は更に厳しい。2008年のリーマンショックの傷が癒えないところに2011年の東日本大震災が発生。国際競争力が衰え、人件費低減等によって日本の購買力は著しく低落している。
その中で日本の消費は大きく変化した。「モノ」に対する価値観に大きな変化が生まれている。価値と価格のバランス、バリューを重視し、いかに安くとも自分のバリュー価値に合わない「モノ」には見向きもしない。ライフスタイルが使い捨ての米国型から大事に「モノ」を扱う欧州型に切り替わった。
更に格差社会が進展している。日本は世界では珍しい格差の少ない社会であったがグローバル化・情報化・高齢化の波を受けて格差が拡大してきている。日本社会の特徴であった分厚い中間層が著しく減少。消費は「気」に影響される。低所得者層が拡大するニュースが数多く取上げられて消費する「気」が萎んでゆく。 最大の年齢構成を持つ団塊世代は、比較的余裕を持つ世代ではあるが年金カット、健康保険料負担増、所得税率アップ等によってリタイアー生活にもかかわらず将来に備えて財布の紐が固くなった。
その様な状況の中で消費税率がアップされれば、消費は一気に冷え込む。消費者は消費量を削減し、価格に一層厳しい目を向ける。生産者は小売業から仕入価格を抑えられ、円安によって原材料が上がるので、人件費を中心とした経費カットで何とか経営を維持しようとするが既に目いっぱいに実施しておりこれ以上は難しい。倒産する会社が続出する。生産者が減少すれば更に供給は狭まる。買い手は減少する。そして少子高齢化によって買い手が減少、更に消費は縮小する。消費縮小に伴って各企業の業績は更に悪化、給与の引き下げが続く。所得の減少は消費力を低下させるスパイラルが続く。 2014年、2015年の消費税率アップによって「消費氷河時代」が到来する。前年の2013年の駆け込み需要も有ってピタリと消費の動きが止まる。箪笥を開けると着古してはいるが未だ着用できる衣料品がずらりと並んでいる。買い控えムードが蔓延し、ディスカウント志向は更に強まる。
店舗を構える小売業は、価格面、コンビニエンス性でNETに押され経営が更に厳しくなる。店舗が減少することで更に消費の機会が減少する。人件費の削減を継続してきた小売業は、人件費をこれ以上削減することは難しい。リストラという愚策によって贅肉を削り取ったつもりが優秀な社員が逸早く会社を去ったことで自らの筋肉を削ぎ落してした結果になり一層販売力・体力が落ちてしまった。人員削減によって残された社員の負担は重くなり、買物は楽しいものというよりは時間を浪費する、出来れば避けたいものと考える人が増える。
買物をする時にはNo1の店、地域を選択する。外れた地域の店舗の売上は更に低落し存続が危うくなる。現在の経営者の大部分は経営危機に対して業績の芳しくない支店を最後まで様々な施策を展開して打開する努力をする事なく簡単に閉鎖する。閉鎖された地域の消費者は消費機会を更に減少する。
消費税率アップによって引き起こされる消費氷河時代を切り抜けるためには、ゼロベースに立った経営の見直しを行い、いわば経営維新ともいえる改革を行わなければ生き抜いていけない。ピンチはチャンス。経営維新を断行出来た企業は衰退し消え去っていく企業の分を取り込んで成長する事が出来る。
経営維新を断行するためには「黒船」が必要。日本の企業は優れた創業者的な経営者がいる場合を除いて内部からの改革は起こらない。「黒船」すなわち外部の力をいかに活用出来るが経営維新を成功させられるかの最大のポイントだ。「黒船」を見つけた企業のみが生き残り、維新後発展出来る。
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